開幕から約1カ月がたち、混戦が続いている。そんな中、首位を狙う巨人と勝率5割を狙うDeNAが対戦した。巨人の先発は横川で、DeNAの先発はケイ。どちらもクイックに課題がある投手で、機動力を使ったスリリングな展開が期待された。しかし巨人もDeNAも、もうひとつ機動力を生かし切った野球は実践できなかった。

最初に紹介すると、横川のクイックは1・30秒前後で、ケイは1・40秒以上のタイムだった。プロならば変化球でも1・25秒を切ってほしい。横川はけん制がうまいため、このタイムでも盗塁を決めるのはそれほど簡単ではないが、ケイはけん制も苦手で、ちょっと足の速い選手なら盗塁を決められるレベルだと考えていいだろう。

もったいなかったのは巨人。3回1死一塁、走者は門脇だったが、坂本が初球を打ってショートライナー。5回無死一塁、走者は吉川で投手の横川が初球に送りバントを決めた。坂本はクリーンアップを打つ選手で、打球もいい当たりだった。横川の初球の送りバントも見事だと言っていい。しかし、走者の走力とケイのクイック能力を考えれば、経験値の高い坂本はファーストストライクまで待ってもよかったし、横川の送りバントも盗塁を決めた後でよかった。

DeNAは機動力で崩そうという意識が低いように思えた。2点をリードされた4回1死一、二塁、関根の打球は一塁への痛烈なゴロだった。これを一塁手の岡本和がキャッチし、ベースを踏んだ後に二塁へ送球し、宮崎は楽々アウトで併殺になった。しかし、タイミング的に楽々とアウトになるのなら、二塁ベースに滑り込まず、ランダウンプレーに持ち込む意識がほしい場面。そうなれば二塁走者はホームを狙えるチャンスができる。おそらくアウトにはなっただろうが、そうした粘り強さが得点につながるケースはある。

もうひとつチグハグに見えたのは、6回無死一塁でフルカウントになったときだった。投手は高梨で、クイックタイムは1・25秒前後で、足の速い選手でなければ簡単には走れない。1番桑原の走力を考えると、単独スチールは難しくてもフルカウントでの自動エンドランはかけてもいい。しかし石上は空振り三振で、桑原も二塁へ走らなかった。このケース、1、2番で動けないと、機動力野球は実践しにくい。変則左腕だけに空振りの可能性を考えて走らせなかったのなら、石上には最初から代打を出してよかった。

長いシーズンで勝ち抜くためには、機動力の使いどころが重要になる。今試合までで巨人は盗塁12個で、DeNAは13個。どちらも走れる選手はいる。もう少し機動力を有効に使える野球や、機動力で揺さぶれる投手に対して効果的に使えれば、もっと優位に戦える試合は増える。スリリングな機動力野球で、白熱した試合を期待している。(日刊スポーツ評論家)